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遊遊漢字学」が楽しみPART72「婚」


毎週日曜日のお楽しみ、漢字学者阿辻哲次氏の日経連載「遊遊漢字学」。
本日阿辻先生が取り上げたのは「婚」という漢字でしたが、阿辻先生は「『婚礼』はなぜ夕方だったか」と、いささか漢字学者とはかけ離れたような問いかけをなさっています。

なるほどそう言われれば、時代考証に厳格な時代劇などをみると、婚礼は煌々と燭を焚いた広間で行われているシーンに出くわしますね。

そもそも婚礼を夕方から行うという習慣は、夜陰に乗じて他の集落に忍び込み、若い娘を略奪して来て妻とする、古代原始社会におこなわれていた「略奪結婚」の名残りだという説があるのだとか。


礼記(らいき)の曾子問(そうしもん)には、

嫁女之家 三夜不息燭 思相離也
取婦之家 三日不挙樂 思嗣親也

と孔子は説いたと書かれているそうです。

「娘を嫁がせた家は、嫁いでいった娘のことを夜も寝ずに考えるから、三日間ろうそくの灯りを絶やさないでいるし、嫁を取った家では家を継ぐことを考えるから三日間音曲の演奏を控える」と解釈するのが一般的だが、「娘を奪われた家は悲嘆にくれて眠れないから夜もろうそくの灯が絶えず、奪い取った側は、略奪がばれないようにほとぼりが冷めるまでひっそり暮らす」とも解釈できると、阿辻先生は書いておられます。

・・・ふ~む、なるほど。「略奪結婚」が往時では日常的であったと。


ところで日経の「遊遊漢字学」のすぐ下の連載小説のコーナーの紙面では、池澤夏樹の手になる第21代雄略天皇を主人公にした「ワカタケル」が好評連載中ですね。

それまでは有力豪族による連合体であったこの国を武力によって統一し、大王(おおきみ)を中心とする中央集権体制を確立したとされる雄略天皇、その若き日の「ワカタケル」のものがたりですが、この「ワカタケル」文字通り、猛(たける)に猛た人物として描かれている。

武をもって制略した有力部族の女(むすめ)を次から次へと寝所へ招き、共寝を繰り返す。その女が孕んで子をなせば、わが手によって滅ぼされた有力部族の血も遺せるだろうという猛々しい益荒男ぶり。


・・・「婚礼」はなぜ夕方だったか?

阿辻先生がおっしゃっていること、なんとなくわかるような気がします。





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