擬態語
TBS系列のテレビバラエティー番組「ニッポンの出番ですよ」は、外国人から見た日本の文化と日本人の思考について分かりやすく教えてくれる優れた番組です。
以前この番組では、日本人ほど擬態語を数多く使い分ける民族はいないということを取り上げていました。
たとえば食べ物の食感を「サクサク」とか「フワフワ」、あるいは「プリンプリン」などと表現されても、外国人にはそれがどう違うのかまったく理解できない。欧米にはそのような食感を表す擬態語がないということでした。
「シャキシャキ」「アツアツ」「トロトロ」「カリカリ」・・・食感を表現する擬態語などいくらでも出てきますね。これらの言葉が食べ物のどんな状態を指しているのか日本人には説明するまでもありませんが、外国人にはまったく意味が分からないというのです。
欧米にもスナック菓子があると思うのですが、湿気ってしまったクッキーなど美味しくないのは同じだろうと思うのですがね。焼き立てのクッキーを食べたとき、彼らはその美味しさをどう表現するのだろう?
突然ですが、鉛筆の芯の先が尖った状態のことをを皆さんはどのように表現しますか?
以前当地の地方紙が金沢大学の人間社会研究域の日本語学が専門の加藤和夫教授が行ったおもしろい調査について報じていました。加藤教授が学生らとともにJR北陸本線沿線の各駅で、世代別に鉛筆の芯の先が尖った状態のことをどのように表現するのか調べたところ、
石川県では「ケンケン」もしくは「ピンピン」、福井県では「ツンツン」と表現するのだそうです。
身近なものの表現の仕方なのに、同じ北陸でもこうも違うものかと驚きました。富山県西部の地方都市高岡市に住む私としては、お隣の石川県金沢市へは車で1時間もかからずに行けるのですが、「ケンケン」「ピンピン」などと言われても何のことかさっぱり見当もつきませんね。
鉛筆を持ちながら福井県流に「ツンツン」と言われれば、かろうじて尖っていることを言っているようだと分かるかもしれませんが・・・。
では、富山県ではどう言うか?
「ツクツク」と言います。いかにも尖っている様子を上手く表現していると思いませんか?
小学校に上がったばかりのころ、学校の先生がこう言ったことを今でもはっきり思い出すことができます。
「明日の国語の時間は、書き方の練習をしますから、鉛筆の先を"ツックツク"に削ってこられぇ~。」
私たちは何の違和感もなく先生の言われるままに、鉛筆の先を「ツックツク」にして行きましたね。実に素直な良い子だったものです。(笑!
ちなみに終わりの「・・・削ってこられぇ~」は、「・・・削って来なさい」という意味です。
お気づきかと思いますが、「ツクツク」より「ツックツク」の方がより尖った状態を強調しているようです。もっと尖った状態を表現したければ、「ツックンツクン」という言い方もあります。(笑!
生鮮魚介類が豊富な富山県では、とりわけ鮮魚が新鮮な状態であることを「キトキト」と表現しますが、もっと鮮度を強調したいときには「キットキト」と言うのもこれと同じことでしょう。
蛇足ですが、富山県では空港まで「富山きときと空港」と改名してしまうくらいですから、富山県民がいかに「キトキト」という言葉が好きか知れようというものです。(苦笑!
さて加藤先生に言わせれば、「ケンケン」も「ツンツン」も「ツクツク」も標準語ではないということだそうです。残念ながら肝心のその標準語については言及されていませんでした。鉛筆の芯の先が尖った状態のことを標準語では何と言うのだろう?
あなたの地方では、鉛筆の芯の先が尖った状態を何んと表現しますか?
