暖簾の文字
皆さん、「生そば」と書けば、何とお読みになられますか?
なまそば・・・・正解!
きそば・・・・こちらも正解!
そばに限らず、麺は茹でて食べる食品ですから、その麺の加工された状態で大きく分けて、A 生(なま)麺、B 乾麺(かんめん)、C ゆで麺に分類されます。
Cは、便利です。もう茹でてあるのですから、うどんにしてもそばにしても、さっと湯がいて熱いだしがあれば、直ぐ食べれます。そしてAを乾燥したものがBということになります。当然ながらA・Bを茹でたものがCということになりますね。
ですから、「生(なま)そば」といえば打って切り出した状態のそばを指すことになります。
では、「生(き)そば」
こちらの方は、いろいろ諸説あるところなのですが、一般にはそば粉100%のそばを指すということです。つなぎの小麦粉を用いないとどうしてもつながりが悪く、ぼそぼそと切れやすい麺になります。このため江戸時代の初めごろの「生(き)そば」は、蒸籠(せいろ)でいったん蒸してから茹でたといいます。これが蒸籠もりとして今も残っているのです。
ところでお蕎麦屋さんの暖簾の定番というと、提供されるそばがそば粉100%であるかないかに関わらず、「生(き)そば」という文字と決まっているようです。

これは上野池之端の蕎麦屋さん蓮玉庵さんの暖簾。老舗の名店ともなると暖簾のはためき方からして違うような気がします。
つなぎ粉を吟味し、加え方を工夫して、手ごねの仕方などに独特の技術を駆使して、おいしいお蕎麦を提供なさっている手打のお蕎麦屋さんも多くいらっしゃいますね。
今日では、小麦粉のつなぎも改良され、そば粉自体もはるかにいいものが出ておりますので、必ずしもそば粉100%だからおいしいとは言えないかも知れません。
しかし、10割そばにこだわっている手打の蕎麦屋さんは多くいらっしゃることでしょうし、それはそれで立派なおそばを出していらっしゃるのでしょうが、蒸籠で蒸してから茹でるという調理法を伝承しておられるところは、私の知る限り見受けられないようです。
まぁ、蒸すよりはるかに簡単な調理法が茹でるということですし、麺が打ちたて茹でたてであれば、切れることもないでしょうから、昔の調理法にこだわる必要もないのかもしれません。
蒸し暑い日本の夏は、どうしてもサッパリとしたものが食べたくなりますね。蕎麦を見ると、私も日本に生まれてきてよかったと思わずにはいられません。
お昼には、よく蕎麦屋さんの暖簾をくぐられる方多いと思いますが、一度その暖簾に何と書いてあるかご注目いただくのも、なかなかおつなものではないかと思うのです。
