トラと「一体化」を求めた男
なるほど世界は広ければ、風変わりな男の一人や二人がいたって不思議ではないと思わせるニュースが、アメリカより配信されています。
トラと「一体化」求めたと男供述 米NY動物園の飛び降り事件
詳しいことは分かりませんが、単なるトラ好きとは違うようです。私が何より興味を惹かれるのは、この男がトラと一体化したかったということ。
ちなみに一体化を辞書で調べると、「別々のものが一つになること。別種のものを一つに融合させること」とありますから、この男は肉体も精神もトラと一つになって、融合したかったのだろうか?
肉体だけ融合させるのは、そんなに難しいことではないように思われますが、トラの生物学的な消化という行為が、はたして融合といえるかどうかは疑問の残るところではあります。融合の対象は舌なめずりして喜ぶかもしれませんが、何よりも融合の前に非常な苦痛を伴うのが欠点といえましょう。(笑!
トラの飼育場に進入するのに、その上を通過するモノレールの上から飛び降りたというのですから、トラと融合してしまえばどうか知りませんが、一体化する前なら一個の人間にほかなりませんから、当然のことながら足腰を打って骨折をすれば、トラとの融合に先んじて苦痛を味わうことになったのは当然のことと言えましょう。
しかし、骨折の苦痛がこの男の脳みその尋常な部分を覚醒させたのに違いありません。動物園の係員の指示に従って電流が流れるワイヤーの下に逃げて、九死に一生を得ることができたのは幸いでしたね。
まぁ、野次馬的に言わせれば、肉体だけではなく精神も含めてのトラとの一体化を見てみたいところではありましたが・・・。
さて、私はこの男の骨折が癒えて情緒も安定したならば、日本にかって中島敦という小説家がいて、『山月記』なる小説を記したことを教えてあげたいと思うのです。
確か人間の心の深層には誰にも臆病な自尊心と尊大な羞恥心が潜んでいて、それが高じると人間をトラにさえ変貌させてしまう・・・という内容でしたね。
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トラと一体化したかったこの男は、「山月記」をいかなる思いで読むだろうかと・・・。
